A:いつもキッチンカブーにお越しいただきまして誠にありがとうございます。6月に入ってからの丸善の動きは出来高も伴っていることで力強さを感じます。しかし、先行きのことを考えると決して楽観はできません。
ここまでの人気の背景としては、2004年1〜3月期のGDPが市場予想を上回るなど個人消費が堅調なことで百貨店など小売大手が物色されたことが一番の理由と考えられます。また、一方では9月中旬に国内最大級の新店舗「丸善・丸の内本店」(店舗面積5400u、約120万冊の書籍)がオープンすることに対する期待感も手伝ったと考えられます。
しかし、同社の置かれている現状は決して楽観できるものではなく、投資対象としてはリスクが高いことを軽視すべきではありません。肝心の書籍の販売ですが、日本ABC協会によれば書籍の発売部数は増えているものの販売額は年々先細ってきており、書籍の売上不振を理由に全国の書店の数も1997年以降、減少の一途にあります。「活字離れ」に加え、少子化・人口減少という構造的な問題も先行きの大きな懸念要因です。
また、景気回復基調を背景に長期金利の指標である新発10年物国債である260回6月債が一時1.8%台前半をマークするという環境になっていることも懸念されます。2004年3月期時点で丸善の有利子負債残高は529億円で、有利子負債依存度は61.67%と極めて高い水準にあります。今週はグリーンスパン議長や日銀総裁の発言によって金利上昇懸念が和らいだ感はありますが、このように金利変動の影響を受けやすい体質は早期に改善する必要があり、今後の金利動向次第では株価も大きな変動を起こしかねないと考えられます。
また、来期予想PERも20倍前後という水準にあり、日経500種全体の平均PERが18倍台で推移していることを考えれば特別な割安感は感じられません。
当社の分析モデルによれば、当面の大きな株価のフシは@330円程度、これを抜けるとA380円程度までの上値が最大で見込めますが、それ以上は上記のような理由から困難と判断します。向こう6カ月では330円±15円の水準で推移すると分析します。株価の上昇が続いても持続することを考えるのではなく330円以上を意識した「買い手仕舞い」を優先していくべきだと思います。
甚だ稚拙な解説ではございますが、お客様の投資のご判断にお役立ていただければ幸いです。今後とも宜しくお願い致します。